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実録「ブスはあかん!」(画像)
実録「ブスはあかん!」(物語)
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 読者キャリーの解説

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  第8話  「それでもおかあちゃんが好きやねん」

第7話コメント@
  
   母は時折綺麗な服を着て出掛けるようになった。咽るような化粧の臭いがする中、赤い紅の先を唇にあ
   て、鏡に向かって大きく口を開けて輪郭を取る母(女)の姿を、わたしは建具の隙間から覗いていた。

   「今日は帰ってくんの夜中やしな、ひとりで寝ときや。」
   母はわたしの横を通り過ぎ、さっさと背を向けた。

   母が家を出ると、わたしは息を殺してそのうしろ姿を追いかけた。民家の角に隠れて、気づかれないよう
   に、坂を上っていく母の背中が小さくなるまでずっと見ていた。そしてその姿が消えた瞬間、わたしは母
   が歩く加茂街道に平行に伸びる道を、30メートルほど離れた先にある坂に向かって全力で走った。母
   が歩くスピードより早く走らなければ、見えなくなった姿をもう一度見ることができない。

   母が出掛けるたびに、わたしはその背中を追いかけた。
   けれども、込み上げる涙をぬぐいながら、母の背中を追いかけても、再びその姿を見失うたびに、今この
   瞬間から、一人で過ごさなければならない淋しさと、これまで過ごしてきた様々な日々の痛みが蘇るだ
   けだった。日没前の淋しい夕方である。坂の上から降り注ぐ赤い夕陽が、いつまでも、いつまでも、わ
   たしを染め続けた。その風景はいつもわたしの心を癒してくれた。そして夕陽の中からやがて自分の影
   が現れた時、わたしはやっともう一人の自分(影)と共に家路に向かう気持ちになれるのだった。


   母が酒の臭いをさせて帰ってくるようになったその頃から、ハンチング帽をかぶった二人の中年男が、
   毎朝時間差で尋ねてくるようになった。初めの頃は、人相の悪い男達の睨みつけるような視線に、
   少々脅えることもあったが、毎日会ううちに、親しみを覚えるようになっていった。


   「おかあちゃん、寝てんのか?」
   「うん、おっちゃん、おかあちゃん起こしたらあかんで、おかあちゃん寝起き悪いし、起こしたら機嫌
   悪ならはるしな」

   「あんた、一人でご飯作って食べて、毎日一人で学校行くんやな〜」
   男は冷蔵庫の上の戸棚を開けながらわたしに話しかけてきた。
   「なんや!今日は金置いてないがな!」


   「あっ、おっちゃんあかんで!そっちの戸棚は開けたらあかん!後から来るおっちゃんが持って行かはる
   お金が置いてある戸棚やし、おっちゃんのお金、置いて無かっても、
   そっちの戸棚は開けたらあかんで!」


   「ほな、おかあちゃん起こして来てんか!」
   「あかん言うてるやろ!おかあちゃん貧血症いう病気やから、起こしたらあかんねん!」
   「チッ!日払い返済の約束で金貸したのに、ええ加減にしなあかんで!ホンマに!!」
   男は集金袋を投げつけ、冷蔵庫の前に腰を下ろした。


   「おっちゃん、こんな朝早ようから仕事して、ご飯食べて来てるん?お腹空いてるんやったら、わたしと
   一緒に毎日朝ご飯食べるか?わたしのごはん半分あげるで」
   わたしは、男の様子を伺いながら、ずっと気になっていたことをつい話してしまった。


   「おおきに、おおきに、おっちゃんはええ、それよりあんた仰山食べ、
   そやけどあんたしっかりした子やな〜?何年生なんや?」

   「1年生や」
   「1年生?!ホンマかいな!あんた1年生に見えへんな!」

   「そやろ、わたし大きいしな、保健室の先生が、わたしのこと肥満児やて言わはるねん。おっちゃん
   わたし顔も不細工やろ、実はものすご悩んでるねん」

   「ハハハ…女の子は年頃なったらみんな綺麗になるもんや〜、心配しんでも大丈夫や!」
   「ホンマ!!!おっちゃんわたし大きなったら綺麗になるん?!」
   
   「なるなる!ハハハ…」
   「ありがとうおっちゃん、そやけど今日は堪忍な、おかあちゃん忘れてはるん違ごて、お金無いんやと
   思うわ、おかあちゃんに言うとくし、今日は帰ってな、もしおかあちゃんが返せへんかったら、
   わたしが大きなったら返すし、おかあちゃんのこと怒らんといたげてな」

   「ハハハ…おっちゃんもあんたみたいな賢い子欲しいわ、ほな、おかあちゃんに言うといてや!
    そやけどええ加減にしなあかんで、あんたのおかあちゃん、無駄足踏ましてからに・・・」

    男が帰るとすぐに、奥の部屋からカーテンを開ける音がした。振り向くと、
    母が腫れた顔で立っていた。

    「帰ったんか?」

    「あっ、おかあちゃん、もう起きるん?おっちゃん帰えらはったで。今日、戸棚にお金置いてないし、
    きつう怒ってはったわ」

    「ホンマに何でこんな苦労ばっかり、しなあかんにゃ!嫌になるわ!」


    ガチャ!

    「あっ、おかあちゃん!あかん!もう一人のおっちゃんや!」
    「おかあちゃん、居いひんて言わなあかんで!」
    「うん!わかった!」


    「なんや!金置いてないがな!おかあちゃんは?」
    「おかあちゃん、居はらへん!さっき出て行かはった!」
    「何言うてんにゃ!ベッドのカーテン揺れてるがな!おかあちゃん今隠れたやろ!」
    「違う!隠れてなんかいはらへん!ホンマや!」

    「影が見えてるがな!」


   それからというもの,来る日も、来る日も、昼夜問わず、これまでより大人数の借金の取りたて屋
   が、家に出入りするようになっていった。そんな時、いつもわたしの瞼の中に、優しい父の顔が浮
   かぶのだった。

   「おとうちゃん何処に居はるんやろ?、何で帰って来はらへんのやろ?、おとうちゃん
   に会いたいな〜。お兄ちゃんにも会いたいな〜。なぁ、おとうちゃん、おかあちゃんな、いっつも怖い
   顔してわたしのこと叩かはるし、わたしのこと嫌いやて言わはるねんけどな、わたしはそれでもおか
   あちゃんが好きやねんよ。

   なぁ、おとうちゃん聞いてるん?聞いてるんやったら早よ帰って来て、わたしな、おとうちゃんと、
   おかあちゃんと、お兄ちゃんと、いつも一緒にいたいねんよ。」


   殺風景な狭い部屋でひとり、わたしは、人が尋ねてきても、一人のときも、ネズミが走り回る天井を
   見上げ、うわ言のように毎日こう言い続けるようになった。

   「おかあちゃん、居はらへん、どこに行かはったかも、わたし知らん」……


                   つづく・・・


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