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実録「ブスはあかん!」(画像)
実録「ブスはあかん!」(物語)
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 読者キャリーの解説

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ブスはあかんスペシャル!第7話 「不安な日々・・・」

第7話コメント@


   「ゆみちゃんどしたん?」
   「あっ、里江ちゃん(同じ町内に住む中学生)」
   「どうしたんゆみちゃん、しんどいの?」
   「ううん、違うねんよ。」

   「どうしたん?暗い顔して」
   「明日遠足なんやけど、わたしお弁当箱ないし、さっき葵橋のとこにある折(おり)屋さんに
   竹の皮買いに行ってんけど、お母ちゃんがくれはったお金足りひんかって、買えへんかってん」

   「おばちゃんは?おばちゃん何処にいるん?」
   「お母ちゃんパラダイスやと思う」
   「パラダイスって出町のパチンコ屋か?」
   「うん、毎日11時にならな帰ってきはらへんねん。」


   「そらえらいこっちゃ!ゆみちゃん遠足行けへんやん!どーするん?一緒にパラダイス行って
   あげるし、おばちゃんにお金貰い。」
  
   「えっ、あかんあかん!行ったら怒られる。里江ちゃん知らんの?パチンコって手止めたら流れが変
   わるんやで、おかあちゃんがパチンコに負けはったらたあかんし、もうええねんよ、どうせ遠足 行って
   も恥ずかしいだけやし、わたし別に行きたないねん…」

   「ゆみちゃん、なんで遠足が恥ずかしいの?遠足って楽しいやん、わたし遠足好きやったで」


   「里江ちゃんわたしな、一生懸命お弁当作るねんけど、卵いつもぐちゃぐちゃになるし、ソーセージ
   も真っ黒けに焦げてしいまうねん。みんなのお弁当は、おりん(近所の駄菓子屋)で買うたソーセ
   ージなんか入ってへんねんよ、赤い色したお肉屋さんのウインナーやで、それがお花の形になって
   てな、エビフライやら、ハンバーグやら、いっぱい入ってて、ご飯もおにぎりで、ホンマに綺麗やねんよ。


   竹の皮に、ご飯とぐちゃぐちゃのおかず包んで持って行ってるん、わたしだけや。お弁当みんなに見ら
   れたら恥ずかしいし、いつもひとりで隠れて食べてるねん、そやけどな!わたしもいつかみんなに負け
   へん綺麗なお弁当作れるようになりたいし、遠くから、みんなのお弁当見てるんねんよ。」


   「ゆみちゃん、お弁当自分で作ってるん?おばちゃん作ってくれへんの?」
   「おかあちゃん貧血症やし朝起きられへんねん、貧血って病気やねんよ。

   わたしは咄嗟に母をかばった。母の行動が自分を惨めにしていることはわかっていた、
   でもそれは母が悪いのではない!母に嫌われることばかりする自分が悪いからだと思っていた。
   わたしにとって、母を中傷されることは、自分が虐待されることより、心が痛むことだった。
   

   「あっ、ゆみちゃんちょっと待っとき!」

   「里江ちゃんどうしたん?」
   「早よこの自転車の後ろに乗り!」

   「なんで?」
   「ええから乗ったらええねん、折屋さんまで行くしわたしにしっかり捕まってなあかんよ!
   今日は竹の皮と違ごて、折買うしな!折やったら恥ずかしいこと無いやろ?」


   「そやけど竹の皮も買えへんのに、折やったらもっと高いやん、それにお店8時までやし、今から
    行っても閉まってるで」

   「急いだら間に合うかも知れへん!足りひんお金はわたしが出してあげるし、心配しんとちゃん
   と捕まってるんやで!」

   「ホンマ!ホンマにわたしに折買うてくれるん?ありがとう、ありがとう里江ちゃん、お店開いて
   るかな〜?、里江ちゃん自転車頑張ってこいでな〜 お店開いてたらええのにな〜」

   
   自転車を走らせる里江の背中のぬくもりを感じながら、わたしの胸は弾んだ。
   みんなと同じ形の器を持って行けることは、わたしが初めてみんなと平等になれた証のように思
   えたからだ。

   大通りに出てから、自転車は一気に加速した!
   「ゆみちゃん、しっかり捕まってなあかんよ!」
   「うん!」


   わたしの弾む気持ちに覆いかぶさるように、無理かも知れないという切迫した不安が重なった。
   その瞬間、わたしの脳裏に小学校に上がって初めての遠足の朝の出来事が生々しく蘇った。
   
  
   「おかあちゃん、起きて〜!なぁ、お願いやし起きてぇなぁ、今日遠足やて言うてたやろ、もう
   じき集合の笛鳴る時間やし、お弁当作って…」
  
   「まだ早い!!」

   「もう時間ないねん、お弁当作ってくれへんかったらわたし遠足行けへんやん…」

   「なぁ、おかあちゃん、お弁当作って…」
   「うるさい!眠たいのに!まだ早い言うてんのが分からんのか!」

   激怒したかすれた声を、喉の奥から絞り出すように荒げ、母は頭から布団をかぶった。

   なぜ母はわたしを産んだのだろう?なぜ母はわたしの世話を何もしてくれないのだろう?
   母に辛く当たられれば、当たられるほど、わたしの中で、もっと良い子になって母に好
   かれたいと思う気持ちが溢れてくるのだった。

   「おかあちゃん、わたしお弁当自分で作るし、寝ててもいいで。」
   

   わたしは泣きながら、冷蔵庫を開けた。

   「おかあちゃん、お弁当のおかず買うてくれてへんの?おかずは?」
   「卵があるやろ!、それ焼いておひつの冷やご飯持って行き!」


   「うんわかった… おかあちゃんお弁当箱は?お弁当箱ないし、買うてて頼んでたやろ?、
   お弁当箱どこに置いてるん?」

   わたしは母の顔色を伺いながら恐る恐る聞いた。

   「そこに竹の皮買うてきて置いてあるし、それに包んでいき!弁当箱なんかまだ要らん!」


   
   わたしがどんなに頑張っても、母はいつも、絶対に超えることのできない壁となってわたし
   の前に立ちふさがった。

   今思えば、母は母なりの苦しみがあったのかも知れない、だが母のその苦しみは幾度も
   幾度も、形を変えてわたしの中に流れ込んでくる。遠足の日、給食費の支払日、家庭
   訪問の日、そしてそこには、必ず、わたしには解決のつかない不安と、母の激しい表情
   が重なっていた。

   
   ドン!ドン、ドン!ドン、ドン、ドン!
   「すいませーん!、開けてください!すいませーん!開けてください!」
   ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
   「すいませーん!お願いします!お店開けてください!すいませーん!お願いします!お店開けて
   貰えませんか〜!」


   ガラス越しに映る人影は、里江の声を無視するように、灯りとともに消えた。

   「あかんゆみちゃん、お店開けて貰えへんかったわ…」
   里江が申し訳なさそうな声で言った。


   どんなに願っても、いつもこういう風に終わる現実に感傷しながらも、一方でわたしは、遠足に行かなく
   てすむという理由が出来たことにほっとしていた。

   一生懸命、自転車を走らせてくれた里江に感謝する気持ちより先に、涙がボロボロと流れてきた。


   「ゆみちゃん、泣いたらあかん、泣かんでもええ、わたしのお弁当箱でよかったら貸してあげるし、
   なっ、そうしよし!今からわたしの家に取りにおいで!」
   「えっ!お弁当箱貸してくれんの?ホンマ?いいの?」
   「構まへん、貸してあげる!」
   
   明日は、恥ずかしい思いをしなくていい!みんなと一緒にお弁当が食べられる!

   「ありがとう!里江ちゃん、ホンマにありがとう!わたしお弁当箱持って遠足にいくの初めてや〜!」


   その夜更け、ようやく不安から開放されたわたしは、里江に借りた、赤いカーネーションがプリントさ
   れたアルミの弁当箱を、枕元に置いて安心して床に就いた。こんな気持ちで遠足の前夜を迎える
   のは初めてだった。

                                       つづく・・・



  

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